不倫慰謝料の金額と収入の関係について
1 基本的に不倫慰謝料と相手の収入は無関係
不倫慰謝料は、不倫をした側の不貞行為によって、不倫をされた側が被った精神的損害に対して支払われる損害賠償金です。
そのため、不倫慰謝料を請求する相手の収入は、法律的には慰謝料の金額を変動させる要素にはなりません。
ただし実務上は、相手の収入が高い方が、不倫慰謝料の金額が高くなる可能性はあり、かつ実際に慰謝料の支払いを受けられる可能性も高まります。
以下、不倫慰謝料の法的性質と、相手の収入が高い方ことのメリットについて説明します。
2 不倫慰謝料の法的性質
不倫慰謝料は、法的に表現をすると、不法行為に基づく損害賠償金です。
不貞行為によって被った精神的苦痛(平穏な夫婦生活を送る権利の侵害)に対する損害賠償として請求されるものです。
不倫慰謝料の金額は、以下のような要素を総合的に考慮して決まります。
①婚姻期間の長さ
②子どもの有無
③不倫の期間・不貞行為の回数
④離婚や別居に至ったか否か
⑤不貞行為の時点での夫婦関係の良し悪し
ただし、示談交渉の実務においては、現実的に相手が慰謝料の支払いができるかどうかという点も重要であることから、相手の収入状況も考慮して慰謝料の金額を決めることもあります。
3 相手の収入が高い方ことのメリット
実際には、不倫慰謝料の金額を決める際、加害者側の収入が高いほど慰謝料も高くなりやすい傾向にあります。
その理由は、次のとおりです。
まず、経済的に余裕がある場合、単にある程度高額な慰謝料であっても支払うことが可能であるためです。
不倫慰謝料請求を受けている側には、精神的に大きな負担が存在することから、支払額を増額することで早期解決をしたいというインセンティブが働くことがあります。
次に、相手の社会的地位も高い場合、不倫に関する問題が表面化すると信用を損ねるリスクも大きいと考えられます。
示談交渉が決裂して公開の裁判(訴訟)に発展することを回避するため、相場よりも高い金額の慰謝料の支払いに応じるということもあります。
示談成立後は、相手の支払い能力も重要なポイントとなります。
収入が低く、支払原資が確保できない場合、結局慰謝料の支払いができないということもあるためです。
収入が高い場合には、支払い不能となるリスクは低いといえます。
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