逮捕されても送検されない場合
1 微罪処分
検察が管内の警察に特定の極めて軽微な微罪事件を指定し、それらの事件については、送致をしなくてよいという取扱いが微罪処分です。
逮捕されたら、多くの場合、48時間以内に、検察に身柄を送致されます。
もっとも、それは、あくまで留置の必要があるときです。
極めて軽微な事案であり、被疑事実を素直に認め、捜査に協力的であり、示談が成立したことにより被害回復が十分にされ、被害者からお許しをいただき、防犯カメラの動画データ等客観的な証拠はすべて警察が押収済みのため具体的な証拠隠滅のおそれがなく、被疑者に住宅ローンを組んだばかりの住居があり、同居の親族等被疑者への関心が高い身元引受人もおり、定職に長期間ついており、逃亡のおそれもなく、前科前歴もない等の事情がある場合はどうでしょう。
数の限られた留置施設に、限られた予算を使って被疑者を閉じ込め、人身の自由という人権を制約する必要性は下がるでしょう。
警察よりマンパワーの少ない検察に警察が逮捕した事件のすべてを送致したら、いかに検察が優秀とはいえ、検察の処理能力の限界を超えてしまうでしょう。
そこで、検察が指定した一定の類型の事件に限り、警察の判断で、検察に送致しないこととしているのです。
イメージ的には、検察の起訴猶予(有罪にできる証拠は十分あるけど、人生をやり直すチャンスを1回だけあげるから、今回に限り不起訴にしてあげます。)の権限の一部が警察に委ねられているともいえます。
2 逮捕の場合はハードルが高い
もっとも、逮捕の場合、48時間以内に検察に送致しなければならないため、48時間以内に接見室で弁護士と打合せし、弁護士が被害者側と接触し、示談を成立させることは、極めてハードルは高いです。
接見希望を出しても、弁護士が留置施設の近くにいて、すぐ接見できるとは限りません。
弁護士が警察に被害者の連絡先を教えるよう頼み、警察が被害者に連絡しても、被害者がすぐ電話に出て、教えてよいと即答するとも限りません。
被害者が警察に連絡先を教えて警察が弁護士にそれを伝え、弁護士が被害者に連絡しても、示談する、示談金はいくらでよい、と即答するとは限りません。
金額の折り合いが付くまで時間はかかります。
弁護士が被害者と会う場合、お互いの日時の調整も必要です。
このように、48時間はあっという間に経過してしまうため、逮捕の場合で微罪処分になることは稀です。


















